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幽霊西へ行く(日语原文)-第6章

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 この哕炇证⑼径恕钉趣郡蟆筏税k狂《はつきよう》してしまったのも、決して無理とは思えません。
 哕炇证蛉·辘丹à啤k狂しているのを知った小林三郎の口もとには、またしても恐《おそ》ろしい、ぶきみな微笑《びしよう》が浮《う》かび上がって来ました。
 発狂しているのなら、彼の口から、事件の真相の洩《も》れる気づかいはない。そんならここで殺すよりも、このまま警察へつき出す方が、自分の身も安全だし、医師殺しも、彼の発狂《はつきよう》しての犯罪だと思われるだろうと、悪魔《あくま》がかすかにささやいたのです。
 哕炇证蚩‘《しば》り上げ、かくして持って来た、タオルや金槌《かなづち》を、その場に捨てると、彼は自転車のペダルを踏《ふ》んで、深夜の道を野沢町へと急ぎました……
『顔のない死体』のトリックは、一人を一時あざむくことに成功し、ひいては万人を永久にあざむくことに成功したのです。
「先生、これが私の推理し得た、この事件のかくされた真相だったのです……」
 私はもはや、はげしい興奮を禁ずることは出来なかった。燦《さん》として輝《かがや》く月光を浴びて、彼の顔には、いまや蔽《おお》い得ない、悪鬼《あつき》にも似た殺気が漲《みなぎ》り溢《あふ》れている!
「先生、あなたは私が、実際の事件を、小説的に脚色《きやくしよく》したことをお責めになりました。いかにもそうでないとは申しません。だが先生、あなたも今こそお分かりでしょう。三年前を十年前といい直し、小林三郎を木下晴夫と改めれば、これはそのまま先生の体験なさった事件のはずです」
 彼の言葉の通りであった。いかにも今から十年前、私はこの海岸で、人妻となった澄江と許されぬ恋《こい》に陥《お》ちた。その結果、あの恐《おそ》ろしい『顔のない死体』の事件が起こったのだ。これは私の心の中に、長く癒《い》えない痛手を残し、私の良心は澄江の美しい面影《おもかげ》を描《えが》き出しては、たえずタラタラと鮮血《せんけつ》を迸《ほとばし》らせていた。だが、或《あるい》はその傷の癒《い》やされることもあろうかと、自分勝手な考えを抱《いだ》いて、訪《おとず》れて来たこの村で、この事件のことを聞こうとは。かくも鋭《するど》く、事件の裏の秘密を曝露《ばくろ》されようとは……
「あなたはいったい誰《だれ》なのです……」
 私は思わず口走っていた。
「お分かりになりませんか。あなたの恋人《こいびと》に、信吉という弟のいたことを覚えておいででないのですか……」
 信吉、信吉、澄江の弟……そういえばたしかにそれにちがいない。月明りとはいいながら、それをどうして、今の今まで、気がつかないでいたのだろう。
「僕《ぼく》はあなたの行動をば、責めるわけではありません。正当防衛としては、あまりにも度を越《こ》した行動ですが、あなたとしては、あの場合、止《や》むを得なかった行為《こうい》だと、弁解なさることも出来ましょう。ただあなたが二度までも、姉に対してなさった背信の行為……それだけは、僕は断じて許せません。姉は信じたあなたに裏切られたため、止むを得ず、勝原彦造に嫁《とつ》ぎました。そしてふたたび、地獄《じごく》の責め苦がつづきました。美しかった姉なのに、いまは全く廃人《はいじん》です。生ける骸《むくろ》となったのです。これを思えばみんなあなたのため……」
「君は僕をどうしようというんだい」
 私は自分の首に迫《せま》って来る、鋼鉄《こうてつ》のような彼の両手を感じて、思わず立ち上がった。
「復讐《ふくしゆう》です。この戦争がなかったら、もっと早く、姉の恨《うら》みは晴らしたのですが……
 先生、あなたとここで会ったのを、単なる偶然《ぐうぜん》とお考えですか。決してそうではありません。
 郷里に帰った先生の跡《あと》を、今までつけて来て、初めて機会が得られたのです。
 最も完全な犯罪は、最も単純な犯罪だといいますね。先生がここから突《つ》き落とされて、死んだとしても、誰《だれ》一人見ている者はおりません。叫《さけ》び声さえ聞こえぬでしょう。探偵《たんてい》作家の過失死と、万事はそれで片づくんです……」
 一歩一歩、私は断崖《だんがい》の上へ追いつめられた。
「信吉君、それは摺钉沥筏Α¥饯瓮评恧暇违丧哎蓼馈¥饯欷摔洗螭收‘りがある!」
「今更《いまさら》何をいうのです。男らしくあきらめたらどうですか……」
 私の眼前には、あの恐《おそ》ろしい大鴉《おおがらす》のように、死が巨大《きよだい》な翼《つばさ》を拡《ひろ》げて羽搏《はばた》いていた。子供の時からの、三十年の思い出が、電光のように網膜《もうまく》に大写しに浮《う》かび上がって消えて行った。
 そして最後の瞬間《しゆんかん》だった。
「信吉さん。だめよ。晴夫さんを殺しちゃだめ。ちょっと待って……」
 社《やしろ》のかげから、弾丸《だんがん》のように、この場へ躍《おど》り出して来た陇闻D―それはたしかに、忘れ得ぬ初恋《はつこい》の人、澄江であった。

    4

「姉さん、どうしてあなたがこんな所へ」
 信吉もさすがにこれには驚《おどろ》いたのであろう。私の胸をつかんでいた手を離《はな》し、懐中電燈《かいちゆうでんとう》をその顔につきつけた。
 あの花のような美貌《びぼう》はどこへ行ったのだろう。三十にはとどいていないはずだった。だが痩《や》せ衰《おとろ》え、色も青ざめ、窪《くぼ》み落ちた眼《め》だけがわずかに青春の余燼《よじん》をとどめて輝《かがや》いている。松田家に嫁《とつ》いで、夫に地獄《じごく》の責め苦を味わされていた時でさえ、美しく花やいでいたあの人が……顔が心の鏡という、古い言葉が真実なら、この人の心は六十の老婆《ろうば》であった。
「晴夫さん……しばらくでした。大変ご成功なさったそうで、わたくしもかげながら、お喜びしておりますわ。信吉さん、あなたは何んと早まったことを……晴夫さんには、何んの罪もありません。さっきから、あなたのお話は全部残らず聞きましたが、あなたはとんだ間摺钉蓼沥筏い颏筏皮い毪韦扦埂
「でも姉さん、あれは姉さんに、話していただいた通りの話なんですよ」
「わたしは晴夫さんに、松田の計画を知らせたなぞ、一言《ひとこと》も申したおぼえはありません」
「それだけは、僕《ぼく》の想像でした……」
 彼は面目なさそうに顔を伏《ふ》せた。
「わたくしも今日までは、晴夫さんが、松田を殺したものだとばかり思っていました。
 晴夫さん。松田が死にましてからの、あなたの結婚《けつこん》のお申しこみを、わたくしどうしても、お受けはいたしませんでしたね。あなたは定めし、わたくしに裏切られたとでも、お考えになっておられたことでしょう。
 しかしそうではなかったのです。わたくしは、あなたのためを思えばこそ、心を鬼《おに》にしてあなたのお言葉をお受けしませんでした。そして地獄《じごく》へ行くつもりで、勝原のところへ嫁《とつ》いで行ったのです。
 いま、信吉があなたに申しあげた、その言葉をそのまま勝原は、十年前あの事件のすぐ後で、わたしの耳にささやいたのです。ただ、あなたがどうして、松田の計画をご存じだったか、それだけは、どうしてもいいませんでしたが……
 ……どうです。私の口一つで、木下さんは死刑《しけい》になるか、よくいっても無期か、二十年ぐらいの懲役《ちようえき》ですね。あなたはそれでもかまいませんか。しかし何もね、私は好んで木下を、辛《つら》い目にあわしたいわけじゃな
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